Seia Mia Story

闘病ニートのminimalistへの道のような日記

小説 その5「人柱」

栃木県、御国素(おくにそ)村では、毎年恒例の御身人柱祭が開かれる時期になった。この祭りは、村を流れる御身川にある、流れ橋である、御身大橋を毎年新設するための祭りで江戸時代以前から続く伝統ある祭りである。
 
御国素神社を出発点とし、人形をくくりつけた柱を大人たちが持ち歩き、御身大橋の中央の川中島に、人形の人柱を打ち込むことで祭りの終焉と、川の氾濫を鎮めることを祈る祭りである。
 
しかし、昔は読んで字のごとく、本物の人間を柱にして埋めていた頃があった。これから話をするのは、御身人柱祭の起源となった、二人の恋人が生涯の別離の運命になった出来事を、語るものである。
 
 
 
私、蘇田あかねは、御国素神社で巫女をやっています。去年、住んでいた家が火事にあい、両親と弟を失いました・・・・そんな天涯孤独の身となった私を、神主さんは心暖かく迎えてくれました。神主夫妻は、早くに娘さんを災害で亡くしていて、私を本当の娘のように接してくれています。
 
そんな私にも、好きな人ができました。村長をしているところのご子息、田中繁十郎さんです。いつもシゲさん、シゲさんと言っては一緒に居てくれました。家族を失った時に、私に付き添ってくれてとても安心できました。
 
巫女の仕事が終わる夕刻に、いつもの待ち合わせ場所に行くといつも先に来ていて、迎えてくれました。嬉しかったです。本当に嬉しかった・・・・。
 
そんな一夏の思い出を作りつづけていたころ、村では流行病で数十人の村人が命を失っていました。そんな悲しい時に、御身大橋の桁が流されるほどの洪水が起き、今もその流れが止みません。
 
それで、御国素神社にご祈祷と人柱の指示が下されました。そこで、神主は、私にその命を願いました。
 
「申し訳ない、あかね、頼めるだろうか?」
 
その宣告は、自死にも等しい言葉でした。そう、私は分かっていたのです。神主夫妻の娘さんが災害で亡くした本当の理由を・・・・。
 
その命を受けて一足早くに、見受け人を繁十郎さんに頼みにいきました。すると、
 
「あかね、正気か!ご祈祷を御身大橋でするということは・・・・」
 
いいのです。シゲさん。私はもう決めたんですから。本当なら私も家族と一緒に消えていた命だったんです。その命を村のために・・・・シゲさんのために捧げられるのなら本命です。
 
「シゲさん、見受け人になってもらえますか?」
「ああ、あかねがそう決心しているのなら、俺はとめることはできない、だけどっ!せめて最後の最後まで見届けさせてくれ」
「はい。ありがとうございます」
 
そう言ってくれたシゲさんの顔がかっこ良くて、今でも私の心の中ではシゲさんの真剣な眼差しが鮮明に思い出されます。
 
じゃあ、現実に戻りましょう。
 
 
 
あかねは、川中島に設けてある、大箱の中に正座して入っていた。ご祈祷をすることと、人柱になることは同一の意味であったのだ。そのあかねを見守るように、繁十郎は大箱の蓋を手にしていた。
 
「シゲさん、もう閉めてもいいですよ。ご祈祷を始めますから・・・・」
「そうか。あかね、君に出会えて本当に良かった。君のことは忘れない」
「・・・・シゲさん、私のことは忘れてください。シゲさんの幸せのために、忘れて欲しいんです、そうしたら、私、嬉しくなりますから!」
「くっ・・・・そうか。・・・・閉めるぞ」
 
 
ガタッ・・・・
 
 
大箱は閉められ、上に土嚢が被せられた。
 
 
 
これで何もかもが終わる・・・・私を延命してくれた神主夫妻に、そして私を愛してくれた繁十郎さんにも、これで会えなくなった。
 
 
そう、これで何もかもが元通りになるの・・・・
 
 
またね。繁十郎さん…
 

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end...
 
 
 
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今回はバットエンドにしてみました。ハッピーエンドの味がわかるのはバットエンドがあるからこそです。